パザ日誌

2003年06月21日(土)

ドント・トラスト・オーバー30

ドント・トラスト・オーバー30@大阪厚生年金会館芸術ホールを見るために、昼頃京都を出発。

ドント・トラスト・オーバー30 ポスター

今日と千秋楽の明日は昼夜の二公演なのですが、ボクが見に行くのは夜の部(午後五時三十分開演)なので、その前に日本橋へ。別に買う物もなくフラフラとSofmapのクリエーターズ・ランドへ行ってみたら、中古の1Uラックがあったので衝動買い。1Uラックを持ってなくて、pazapで使う音源(ハーフラック二個)をしょうがなく2Uのラックに入れていたので、これでちょっとだけ身軽になるのでした。あと石立鉄男さんのサンプリングCD(?)とかがあってちょっと興味津々だったりしましたが。

それから昼ご飯を食べに自由軒へ。実は始めて行ったのですが、やっぱりまずは「名物カレー」という事で注文。でも店員さんは厨房に向かって「インディアン一つ」とかって言っているのですね。「名物カレー」は「インディアン・カレー」という事なのでしょうか? で、インディアン・カレーって何? インディアンがカレー食ってたの? などと色々と考えながら食ってました。ちょい辛めのカレー(ご飯とまぜたもの)の真ん中に生玉子を落としてあるスタイルです。

超有名店という事で、期待し過ぎたからか味は期待したほどではありませんでしたとさ。家のカレーの最終日に、鍋の中にご飯を放り込んで同じ様にして食べるのですが、どっちかっていうとそっちの方が美味しいような(笑)。ちなみにボクの味覚は変ですので、信用しないで下さいな。でもこのお店は味が有って楽しいですね。店員さんがみんなおばちゃんで、マニュアルばっちりのファミレスやファーストフードとは逆の手際の悪さ(笑・悪く言ってるんじゃないですよ、これがいいんです。これがなかったら次は絶対に行きません)とか、さすが大阪! という感じで待ってる間もワクワクで楽しい。また行こう。

それからFM大阪やなんばHatchなどが入ってる複合施設、
湊町リバープレイス
あたりを歩いてると、なんかイヴェントをやってるようなのでちょっと寄り道。何か音楽学校(専門学校?)の主催するイヴェントのようで、屋外に二つステージがあって、一つはダンス・パフォーマンスっぽいの、もう一つはバンドとかの演奏をやってまして休憩がてらに見学。いやぁ若いですなぁ。暴れ系のトガッたバンドで、やたら暴れるんですが自分の楽器は絶対に守る冷静さを隠しきれないパフォーマンスを、ゲラゲラ笑いながら鑑賞。いやぁ面白かった。何が面白かったっていうと、ヴォーカルの子がドラムの所に行って、バスドラの上に乗ってドラムを煽ってたときのスタッフの表情ですね。全体重かけてましたからねぇ、ビビってたんじゃないでしょうか。そのあと施設内に入ってみると、「マンハッタン・ジャズ・クインテット」なんて書いてあったりして、目がハートになったものの、公演はもう終わりかけてる時間だったのでした。残念無念。

それから、川のそばでジャンベかなにかを練習してたと思ったら、コンビニ冷麺なんかをすすり始めた人を橋の上から左手に見ながら、厚生年金会館まで歩いたのでした。芸術ホールは前は中ホールと言ってた所。今回始めてでした。夕方五時開場。土曜日の夜の部ということでしたが、二階席には以外と空席がめだってる感じ。一番前の席というのは分かってたのですが、ステージと席の間隔が他の席と席の間隔と同じ位、つまり座った目の高さはほとんど舞台の床の高さという感じでビックリ。多分舞台を前に足してあるのだと思うのですが。しかしこれだけ狭かったらさっき買った1Uラックが邪魔で、人が通る度に気を使わないといけない代わりに舞台に近くて嬉しいといった所。一応コインロッカーに入れに行ったのですが、さすがに1Uラックは入らなかったですね。

開場から開演まで三十分と言う事で、「もう開演?」という感じで始まりましたドントラ。三時間半の長い芝居とは思えない程、面白くて時間があっという間に過ぎてしまった感じです。ミュージカルといっても生演奏はたまくらいだろう、と思っていたのですが、ちゃんと豪華なバンドさんも入っててビックリ。ユースケ・サンタマリアさんも奥菜恵さんもいい感じ。まわりはどうもユースケファンが多かったみたいで、奥菜さん目当ての隠し撮りヲタクっぽいのも近くには居なかったのか、いや、きっと居た筈なのですが。ケラさんの本も演出も面白くて、歌もよかったです。犬山さんの「金魚鉢」はちょっと聴き取り難かったのと、やっぱり知久さんの強烈な「味わい」と比べてしまうので残念でしたが、サントラで聴くと悪くなかったりしました。

今回一番思ったのは、ケラさんがこの芝居を書く時に例の「イラク戦争」が起こったというのが影響してるのか、戦争に巻き込まれるんですね。そのあたりの触れ方が上手いなぁと思いました。絶妙なバランスを保ってる感じといいますが、つまり「これ以上いくと重くなり過ぎる」というポイントがあって、そのポイントよりは上に行かないんですね。上手く落とすんです。だからって軽い訳じゃないと言う微妙な所があって、それは凄い共感できました。ボクが高校の頃に演劇部が全国大会に行ったんです。ボクは四国大会突破まで在籍してて、全国大会はバンド活動を取って辞退したんですが、その芝居が「戦争」をテーマにして、しかもわざと重くなくしてある作品だったんです。その方が逆に「恐怖」があるんじゃないかという意図もあったと思うんですが、全国大会でこの芝居を見た人からその点について批判する感想が多かったりしたらしいんですね。踊りながら「原爆許すまじ」を歌うとは、考えられない……とか。戦争反対を叫ぶという事に対して、どうも「険しい顔をして拳を振り上げなきゃいけない」とか、そういうのデモだけでいいじゃの? という話で、表現する方法として「それだけ」というのはまったくナンセンスですよね。パンフレットにケラさんが書かれているんですが、ちょっと引用します。

世界の情勢に憤る気分をまともに作品に向かわせることは、これまで慎重に避けて来た。それは表現の力を衰弱させることにしかならないとおもっていたからだ。

「戦争なんかやめようぜ!」なんていう歌詞が入ってるから「反戦歌」なんじゃなくて、そういうのは表現者の表現そのものによって「反戦歌」になるんだと思うんですよ。勿論、歌詞もその表現のひとつには代わりないのですが、それが「戦争なんかやめようぜ!」でなくてもいい。逆にそれはケラさんのいう「表現の力を衰弱」になると思うんですよ。それこそ「戦争なんかやめようぜ!」と言いたいのならデモするなりしたらいいだけの話しで、それを違う方法で表現するのがそれぞれの分野の表現者なのだと思います。この辺りを絶妙に笑わせながらもジワっと攻めて来る辺りは個人的に良かったです。

あれだけ笑わせ楽しませて、一番最後に奥菜恵さん演じる年老いたメグミが息を引き取った時、静寂の中から絶妙のタイミングで流れて来た「金魚鉢」のギターには、ちょっと涙がでそうになりまして、知久さんの歌も効きまして、しかも最後のみんなでの合唱も良くて、素晴らしいエンディングでした。夢の中に居るかのような時間が過ぎた後でも、あとに引く感じに浸りながら、本当に寝てしまって、本当の夢になってしまうのが名残惜しいから、はなかなか寝付けない夜でありました。

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