パザ日誌


2002年3月21日 (木曜日)----すぎもとともひで

優しさとは強さです

昨日うつらうつらとしながらコタツに入って、テレビなどを見てると野村萬斎さんが出ていた。おぉ、「エイスケ」さんや......。この人何歳なんやろ......?と思いながら寝てしまった。「エイスケ」というのは、五年程前にNHKの朝ドラで「あぐり」というドラマがあって、その「エイスケ」役として野村萬斎さんが出ていたのだ。この役がかなり印象的な役だったので、ボクの中では「野村萬斎=エイスケ」になってしまっている。この「あぐり」というドラマはかなり心に残るドラマだった。女優の吉行和子さんのお母さん、吉行あぐりさん原作のドラマ化で、あぐりさん自身の実話を基にした作品だ。

中でもボクが一番印象的だった台詞がある。小説家エイスケが東京に出てきて、良い作品が書けずに悩んでいた。ある日縁側で空を見ていたエイスケがあぐりに言う。

「あの雲はどこに流れていくのかな。」

それに対してあぐりが答える。

「さぁ、それは、風が決めることだから......。」

これは素晴らしい名台詞だった。あぐりを見終えてから出勤するのが日課だったボクは、しばらくシビれて動けなかった。イヤほんま。

この言葉は「諦め」でも「責任転嫁」でもない。結局ちっぽけな人間なんて、何してもどんなに頑張っても逆らえないものがあるのだ。最後の最後は「風が決めること」なんだと分かるヒトは強い。そういう事を何気なく言ってのけたあぐりは本当に強いヒトなんだろうなぁ。逆に「オレは自分の力で流れてるんだ!」なんて言うヒトがいるけど、そういうヒト哀れだよね。出来ないヒトは「そいつの努力が足りないからだ」と言わんばかりで認められない。世の中いくら努力してもうまく行かないことのほうが多いのよ。あんたが上手くいったのは運が良かっただけ。逆に上手く行かなかったのは「運が悪かっただけ」なのよ。最終的には「風が決めること」であんたの努力だけじゃないのよ。

誰に言ってんだろ......?

とにかく、それ以来ボクのモットーは「初めから気紛れな風に任せること」。そんな生き方が出来れば優しいヒトに成れるかもね。