パザ日誌

2003年09月29日(月)

構造1のポリリズム

そういう訳で聴き込んでいるDCPRGのセカンド・アルバム"Structure et Force"(構造と力)なんですが、いやぁ、このアルバムは卒倒しそうな程かっこいいアルバムです。しびれまくり。5曲目がダサくてホント最低なんて感想がありましたけど、五曲目(構造5ー寺院と天国の構造)なんてボクには無茶苦茶かっこいいですよ。特に途中のブラスのテーマが出てくる所とか、それから4拍子から3拍子にメトリック・モジュレーション(簡単に言うと、前後の脈略があるテンポ・チェンジ。この曲では2拍3連が次の1拍になってテンポ・チェンジ)する所とか、また戻る所とかカッコ良すぎです。

それでも個人的には一曲目の「構造1ー現代呪術の構造」(1は正しくはギリシャ数字)のポリリズムにしびれまくりです。今は
P-Vineのデートコースのサイトに菊地さんによる全曲解説があって興味深いですが、その中の「構造1」から。

 ここでの構造は4分の4と4分の5。つまり4拍子と5拍子が同居している。というのが特徴で、いわゆる前作の「プレイメイト・アット・ハノイ」のような、 12素数の割り切れるコスモス・ポリリズムではなく、片方から見るとスクエアなリズム(5拍子で取ると、16分音符を基調にしたハウスみたいに聴こえる)だが、 片方から見ると「訛って」聴こえる(4拍子で取ると、津軽民謡とか、アフリカ民謡みたいなつんのめったトライヴァリックが聴こえる)という物になっています。

12素数の割り切れるコスモス・ポリリズムという面白い言葉が登場してて興味深いです。コスモ・ポリリズムって言うのかぁ……。

このあたりをボクの頼りない知識で説明いたしますと、例えば「プレイメイト・アット・ハノイ」は3と4のポリリズムなのです。これは4分の3拍子で考えると、16分音符が1小節に12個になります。それを4個ずつのグルーピングで3拍子になってる訳です。それを3個づつのグルーピングにしようと思うと、12ですから3で割り切れる訳です。グループの頭にアクセントを付けてみると、1小節が均等に4で割れました(次の譜例の1小節目参照)。これが菊地さんの言う所のコスモ・ポリリズムという事なのでしょうね。両方を4分の3拍子で記譜するんじゃなくて、分かりやすい様に4のパートは4分の4拍子で記譜しますと、次の譜例の2小節目になります。1小節の長さは同じで、一つ一つの音も16分音符と感じるか3連と取るかによって違ってるだけですが、実際は同じ長さなのでどちらかに片寄って聴く限りは「訛り」は分かりません(これを”無い”と言えるかはよく分かりませんが)。

3と4のポリリズム

同じ様なパターンで、今回の「構造1」と同じ4と5のポリリズムも考えられます。4分の5拍子で考えてみますと、1小節に16分音符が20個あります。4でも5でも割り切れますね。16分音符4個ずつグルーピングすれば5つのグループ。そして16分音符を5個づつグルーピングすれば4つのグループが出来ます。これもアクセントでグループの頭を強調してみます(次の譜例の1小節目)。これで4と5のポリリズムの完成です。割り切れるという事で、これもコスモ・ポリリズムと言っていいんでしょうか?

そして同じ様に4拍子と5拍子で譜面を分けると、次の譜例の2小節目になります。勿論1小節の長さは同じです。4拍子パートはずっと5連のパルスを基本として動いている事になります。

4と5のポリリズム

前の3と4の場合みたいに3連で動くのは不自然じゃなくてやりやすいんですけれど、その次の5連を基本にして動くのはやりづらいです。それで5連をやめて4連にしてみます(次の譜例の1小節目。勿論1小節の長さは同じです)。これは「やりづらい」からだけじゃなくて、4とか3とか2とか1とか普段よく使うものにした方が、効果的だからというのもあると思います。これで「コスモ・ポリリズム」じゃない、お互いの基本となる音符の長さが違う(縦の基本パルスが違う)ポリリズムになります。このズレが「訛り」になる訳ですね。

これを応用して実際に使えるフレーズを作る訳ですが、次の譜例の2小節目が「構造1」の基本構造です。お互い1小節目のパルス上で2小節目のフレーズが作られてますので、もともと微妙にズレてます。2小節目の下の4のパートの4分音符はピタリと合いますが、8分音符は微妙にズレて、これが「訛り」になる訳です。

構造1の構造

こんな事が分かってなくても、この曲は充分スリリングで気持ち良く踊れます。ただ「ハノイ」の3と4よりはちょっとリズムが複雑なんですが、慣れるとハマりますね。グルーヴするポリリズム——素晴らしいですね!

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