これは田舎だとか都会だとか、そういうのは関係ないと思うのですが—-いや、でも今みたいにコンビニがそこいらに群がってない時代では……という頃の話かもしれません—-例えば近所の駄菓子屋さんだとか、よろず屋っぽいお店だとかの屋号を、親とかおじいちゃんおばあちゃんとかが言ってるママ、それを受け継いで無意識に言ってしまってるっていうのが、結構誰にでもあるのかもしれません。
ボクの中で、その代表的なものが「ぶっしぶ」だったのです。例えば「青木書店」だとか「枡富の酒屋」だとか「ゑびなの酒屋」とか、名字をそのまま使っている、ごく分りやすい屋号じゃなくて、「ぶっしぶ」なんて、音だけ聞くととても何の事だか分らないです。でも、生まれた時からその店はずっと「ぶっしぶ」で、その名前になんの疑問も持たずに、幼年期から大人に成る迄、素直にスクスクと育ったのでした。
「ぶっしぶ」は線路沿いにある、こじんまりとした「よろず屋系」の—-そんな系があるのか(笑)—-お店で、近所という事もあるんですが、確か全品1割引で売ってる店でよく買い物をしてました。子供の頃お小遣いを握りしめて、お菓子やアイスクリームを買いに行ったり、中学生の頃には昼に自宅迄ご飯を食べに戻っていたのもあって—-こういうの珍しいとよく言われます—-食後に学校に戻る時にアイスクリームを食べながら、学校に向かったりしたものです。
大人に成る迄「ぶっしぶ」っていうのはどういう意味なのか、まったく疑問も持たずにいまして、京都に出てきました。そしてある日、大阪の天王寺の駅の近辺を歩いていて、何気なく見かけた看板に書いていた文字「国鉄物資部」というのを見つけて全ての謎が解けたのでした。そうか、あの「ぶっしぶ」は「物資部」だったのか! と。そう言えばあの「ぶっしぶ」の近辺には線路があったし、線路の向こうには確か国鉄の宿舎もあったと記憶してます。だから、きっとあの「物資部」は「国鉄物資部」に間違いないのでしょう。
おっちゃん印 〜平成福岡方丈記〜というサイトの第6回に「ブッシブ」が登場してまして、やっぱり同じ思いをしている人が居るのだなぁ……と思ってしまいました。
それはそうと、この「ぶっしぶ」も結局、意味が分からなかっただけで、名字を屋号に付けているのと基本的には同じです。ウチの家には、こういうパターンじゃなくて、ひょっとしたらウチだけで通じるんじゃないの? っていう、若しくはそうじゃなくても、もの凄い狭い範囲でしか通じなさそうな屋号が2つあります。それは「りえさんく」と極めつけの「ひーやんく」。これ分る人は大爆笑なんですけどね(笑)。